【コラム】ブルーベリーとワイン ぶどうみたいなワインができるのか

【コラム】ブルーベリーとワイン ぶどうみたいなワインができるのか

皆さんはお酒を飲みますか?ワインを飲みますか?
僕はときどきお酒を飲むし、ワインも飲みます。
さて今回は、よく質問される「ブルーベリーとワイン」のことについてお話しします。

よくある質問 ブルーベリーでワイン作ったりしないの?

結論から先に言うと、今のところ作る予定は全くありません
製造コストとか原材料の問題はさておき、ブルーベリーでワインを作るという気がありません。
理由としては、おそらく僕が作りたいってって思えるものができないと思うからです。
※ここで話すワインは一般的なワインでアルコール度数12~15%程度のもの指しています。簡単に言うと一般的なぶどうのワイン…赤ワインです。 

ちなみに・・・
ブルーベリーワインは存在します。ネット検索をすれば普通に出てくるし、市販されています。
ですが、そのほとんどはアルコール度数10%未満のものです。ワインとしてはアルコール度数が低く、飲みやすいものが多い印象です。
気になる方は是非、お試しになってください。

そもそも、この質問が浮かぶ理由

「ブルーベリーでワインを作ったりしないの?」という疑問は、あって当然のような気がします。
ワインの原料はぶどうです。ぶどうとブルーベリーはよく似ています。味や食感など細かいことを言えば似て非なるもですが、見た目や断面図なんかは似ています。ぶどうジュースもブルーベリージュースの色もとてもよく似ています。
だから、ブドウでワインができるのだからブルーベリーでワインができるのではないか?という疑問はすごく当然のことだと思います。

【コラム】ブルーベリーとワイン ぶどうみたいなワインができるのか

僕がブルーベリーでワインを作らないと考える理由

ここからは僕がブルーベリーでワインを作らないと考える理由です。
ただし、ここでいうワインは一般的なぶどうの赤ワイン(アルコール度数12~15%程度)のことを指します。

ブルーベリーとぶどうの違い

アルコールは、酵母の働きによって糖を分解したときに生まれます。だから、アルコール発酵に糖分は不可欠です。そして、ぶどうは果物ですので、もちろん糖分を含んでいます。(もちろんブルーベリーも糖分を含んでいます。) 
さて、ぶどうの糖度はどのくらいでしょう?ちなみにいちごの糖度は10~11度と言われています。
私たちがよく食べるぶどうは、いちごよりもっと甘く糖度18~20度でです。数字的にも体感的にも、ぶどうはいちごより甘いですよね。
でも、一般的に私たちがよく食べるぶどうでワインはあまり作られていません。
ワインにはワイン用のぶどうがあります。そして、ワイン用ぶどうの糖度は20~25度ともっと甘いんです。この甘さのおかげで、アルコールが生まれワインが作れるわけです。
糖度が低いと当然、アルコール度数は下がります。アルコール度数が低いと、微生物などによる汚染の危険性があります。つまり、発酵ではなく腐敗します。(最近は技術や製法が発達し度数の低いワインもありますが、一般的な赤ワインを目指しているのでここでは割愛)

糖度のお話に戻りますが、ブルーベリーの糖度ってどのくらいだと思いますか?
一般的なブルーベリーは8~13度と言われています。高山ガーデンのブルーベリーも品種によりますが10~18度です。ここまでの話を踏まえるとピンとくると思いますが、ブルーベリーはワイン用ぶどうと比べると糖度が足りません。これでは度数の低いワインになってしまいます。だから、ブルーベリーで普通にワインを作るとぶどうのようにはならないんです。

最近の果物のはやり?

ブルーベリーに限らず、さまざまな果物での流行りなのかもしれませが、実は大きく・甘いものが多いです。生食で食べる分にはおいしくていいんです。でも加工にするとなると、これは大きな欠点になる場合があります。
甘さ以外の要素が薄いので、加工しても味に奥行きが出ないのです。
僕がこう思うのにいい例がキウイです。
キウイって独特な酸味がありますよね。キウイは追熟・完熟させると甘くなります。甘くなると酸味がどこかに消えてしまいますが、無くなったわけではなくて果物のどこかにあるものなんです。キウイの場合は、加熱すると酸味がまた出てきます。だから完熟したキウイを使っても、キウイらしい酸味のあるジャムになります。
でももし、品種改良でキウイから独特の酸味を消してしまったら…きっと加工(ジャムに)したときにキウイらしさがなくなってしまいます。
で、元のお話に戻るとブルーベリーでワインを作るとなると品種の選定がたぶんめちゃくちゃ大変です。
先ほど糖度が必要だというお話をしましたが、糖度(甘さ)以外も必要なんです。
ワインは、辛口・甘口、軽い・重い、シャープだふくよかだ、となんだかいろんな言葉で味が表現されて複雑です。でもこの複雑さは、ぶどうが単に甘いだけでなく、酸味や風味など様々な要素が合わさって生まれたものです。
今の営利栽培品種のブルーベリーで糖度と酸味や風味まで兼ね備えた品種っていうと…たぶんかなり難しいです。
だから、ぶどうのようなワインづくりを目指すとブルーベリーではハードルがかなり高いんじゃないかと思います。

実はあのアニメでも・・・
料理アニメ「美味しんぼ」の第38話「母なるリンゴ」の回でも、似たようなことが語られていました。アップルティーとアップルパイをめぐって、ひと騒動起きるお話です。
コミックの発売からだと30年近くたちます。味的な話では、果物の品種改良って昔から同じ傾向なのかな?と少し考えさせられます。
気になる方は是非ご視聴ください。

最後に…僕が赤ワインを目指す理由

僕が赤ワインと同じようなブルーベリーワインを作りたいなと思うのは、単純にその方が面白そうだからです。
「ひとこと」のところで書きましたが、現在市販されているブルーベリーワインは、ワインとしては度数の低い部類のものです。ぶどうより糖度の低いブルーベリーで通常通りワインを作れば、アルコール度数は低くなります。
僕はブルーベリー農家です。ブルーベリーの品種や品質などを工夫して、アルコール度数が赤ワインくらいになるものが作れたら面白いなと思っています。
でも、今ある度数の低いブルーベリーワインを作るのもブルーベリーの品種や栽培環境や方法など、いろいろな違いで味や香りが変わりそうで面白そうだなとも思います。(飲み比べとか楽しそうですね)

でもまずは、新しい畑を作って生のブルーベリーやジャムやジュースをお届けできるようにするのが先ですので、ワインをもしつくるならその後ですね(笑)